アメリカ人のランチ

 
■アメリカ人の昼食事情を憂える。
 アメリカ人はハンバーガーと並んでピザが大好きである。
金曜日のランチを兼ねた勉強会ではいつも出前でとったピザが並んでいた。直径40cmぐらいの大きさのピザの半分ぐらいはみんな平気で食べる。ドクトルカメさんは6分の1の大きさのものを1枚、時には2枚、それにコーラを一本飲めば十分、夕食までおなかを満たすことができた。町中ではこれで3ドルも出せば十分おつりが来る。

 ドクトルカメさんはパン生地の薄目のやつが好きで、研究所近くの店の愛想の悪いシチリア島あたりの出身らしきイタリア人のおじさんがつくるピザがうまくてよく食べに行っていた。 しかし、いつもいつもピザではやっちゃいられない。ときどきは病院のレストランに顔を出す。

病院にはレストランが3カ所にあったが、その主なメニューはビーフ、チキン、ハンバーガーである。したがってランチはこの繰り返しで食べることになり、数カ月もするとラーメンやうどんがなんとも恋しくなるのである。ああー、たまには汁のたっぷりはいった麺をズズーとすすりたいと思うのである。福井のおろしそばを3枚ほどいっきにすすりたいなーと思うのである。

 研究所でみんなの食べるものをみてみると、このビーフやチキンにポテトチップスやクラッカーのようなものばかりを食べており、よくこれでのどが乾かないものだと感心する。どうしてこんなに毎日、毎日、毎日、パサパサしたものばかりのシンプルな食事に耐えられるのかとあきれはてるのである。アメリカ人にラーメンやうどん、そばのうまさを教えてやりたいと無性に思うのである。

 ときどき研究所では誕生パーテイーが開かれるが、赤や青の色の付いたたっぷりのクリームがのった甘い甘いチョコレートケーキと甘い甘い清涼飲料水がでてきたりしてドクトルカメさんは閉口するのである。どうしても繊細な日本人の口には合わないと思われるのである.アメリカ人が味音痴といわれるのもわかるような気がするのである。

■アメリカンキッズの場合は、さらに深刻?
 8歳と11歳の娘達は地元のパブリックスクールに通っていた。アメリカの学校ではランチは家から持っていっても学校で買ってもどちらでもよく、娘達は最初は学校でランチを買って食べていた。メニューはホットドッグ、ハンバーガー、チキンナゲット、ミートボールの繰り返しで、とくに金曜日のランチはピザに決まっていた。

食習慣や味覚は子供の頃につくられることを考えるとアメリカの学校のそれは最悪だと思われるのである。娘達も最初は物珍しくて喜んでいたが、そのうちだんだん飽きてきて、家でおにぎりやサンドウィッチをつくってもらって持っていくようになった。

驚いたのはアメリカでおにぎりが珍しいものではなく友達に分けてあげると喜んで食べてくれるほどポピュラーなものになっていたことであった。まぁ、のりも昔は気味悪 がられると聞いたことがあったが、味付けのりをもっていって友達に分けると奪い合いになるという。どうもすしがすでにアメリカでは食べ物のひとつとしてかなり定着していることに原因があるようだ。

■結果、引き起こされる症状の考察…
  アメリカの学校のランチの単調さを考えると、日本の学校の給食は野菜、魚、肉じつにバランスよく考えられていて、メニューもカレーあり、やきそばあり、豆腐料理ありでバラエテイーに富んでいて、あらためて感心させられたのであった。

アメリカ人のように小さいときからビーフ、チキン、ビーフ、チキンの食事をしていると、大人になってもそのまま食習慣が引き継がれていくので1日のエネルギー摂取量1万カロリーというのも十分あり得る話である。肉塊が歩いているような人や、太りすぎて座席から肉がはみ出ていてどうやってこの人は立ち上がるんだろうかと思わせるような体格の人に出会うのは日本にはない光景である。

スーパーへいくとミルクやコーラなど3リットル瓶があってそれを山ほどカートにのせて運んでいるアメリカ人をみると、心筋梗塞が非常に多くて一人の血管外科医が年間600例も手術できる場があるのも十分理解できる話である。