金髪美人
■ボストンの冬 ボストンの冬は非常に寒い。 雪は多くはないが一度降った雪はなかなか溶けず、いつまでも道路の片隅にこびりついている。チャールズ川も4月まで凍り付いている。 しかし、晴天の日も少なくなく、そんな日は研究所のビルの窓から戸外を見ると太陽の陽がさんさんとふりそそいでいて、うららかな冬の日だなーと錯覚しがちになる。 ドクトルカメさんも渡米1ヶ月経って車を手に入れて乗りまわすようになったが、そうなるとこの寒さを感じずにすみ、つくづく車のありがたみがわかるようになる。もう車を手放せなくなるのである。 ■金髪美人 8等身どころか背の高い人は9等身、10等身にもなろうかというバランスで、われわれ日本人とのスタイルの違いがいやでも目に写る。さらに、金髪の髪と黒いコートの取り合わせは実に鮮やかである。ときどきは肌の色が茶色っぽかったり、眉毛が黒かったりするのに髪だけは鮮やかなブロンドという金髪の女性もいるのは奇妙だが。 わが女房殿は、もし今度生まれ変われるものならば、いや今度は必ず、必ず白人の女性になって生まれてきたいと嫉妬するのも無理もないと思われるのである。 ■やはり日本女性こそ… 電車内で紙コップのコーヒーをすすったり、朝の10時にオフィスの机の上で堂々と朝食のパンやクッキーを頬ばり、来客があってもまったく動じず、ハーイと悪びれずあいさつをする、ようなことはなさらない。ましてやリンゴをまるかじりしながら公道を濶歩するようなまねは断じてなさらないのである。 あるとき、ドクトルカメさんは町を歩いていてなにげなく銀行のキャッシュコーナーの方を見やると、そこで舌をベロッとだして封筒の糊付けをしている女性を見てびっくりしてしまった。 それ以来,注意して見てみると、あちこちで同じような光景にでくわすのである。ドクトルカメさんももちろん、同じようにしたこともあるが、どうもその後の舌に残る味の悪さがなんとも言えず、最近では水がないときは指に唾を付けて糊づけ部を濡らすようにしているが、アメリカでは糊があまい砂糖か、ハンバーガーの味つけがしてあるのかもしれない。 どうもこの国では封筒というものは舌をベロッと出して濡らして糊ずけするものだと相場が決まっているらしい。 |